実話怪談シリーズ「ある認知症患者の話」
これは管理人の友人から聞いた話です。
その友人は看護師で認知症患者の多い病院に勤めていました。
仮に友人をAとしましょう。
それはAが看護師になって5年が過ぎようとしていた頃で、入職してきた時よりも仕事はスムーズに出来てきたという自負があるとは言え、同じ事の繰り返しの業務に、疲れ果てていました。
その日もAはいつも通り病棟で、仕事に追われていました。
急変があった日で午前中はバタバタしていてお昼休憩も取れていなかったそうです。
そんな日の15時ごろ、午前中の急変した患者さんも落ち着きAがホッと一息ついた時、ある患者さんの家族が面会に来られました。
「こんにちは、いつも○○がお世話になっております。」
Aさんはその人に見覚えがありました。面会に来る人が少ない病棟なので、ここではよく来られる家族はすぐ覚えてしまうのです。
その面会に来られた家族は患者さんの妹に当たる人物のようで、いつもスタッフにも感じがよく、ニコニコしている方だったそうです。
その患者さんはかなり認知症が進んでおり、暴言や俳諧が酷いようですが、妹の前では穏やかだったそうです。
仲がよくいい姉妹で素敵だなぁとAさんは思ってました。
いつも通り面会室に案内して暫くたった頃、Aさんはこの前の検査結果の用紙を家族に渡さなければ行けないことに気づきました。
ノックをして面会室に入ります。面会室では妹さんがCDプレーヤーを持ち込んだようで、ヘッドホンをして患者さんがいつも通り音楽を聴いていたそうです。
妹さんは相変わらず、ニコニコしながら音楽を聴いている患者さんを眺めていました。
「面会中すいません、これがこの前の検査結果になりますのでお持ち帰り下さい。○○さん音楽がほんとうにお好きなんですね」
「そうなんです、○○がせがむものですから、面会の度にこのCDプレーヤーを持ってくるのは大変なんですよ」
などと世間話をしていると、患者さんが急に立ち上がったのでCDプレーヤーが床に落ち、ヘッドホンが外れてしまいました。
そしてCDプレーヤーから流れる「早く死ね、早く死ね、早く死ね、早くしね早く死ね・・・・」と繰り返す女性の声。
Aさんは一瞬の出来事に青ざめたようですが、妹さんは何事もなかったかのようにまた同じようにヘッドホンを付けて聞かせていたそうです。
絶句したAさんはその場では恐ろしすぎて何も指摘できず、何も見なかったふりをしてその場から立ち去りました。
そして上司である主任に相談し、次面会に来た時にはさり気無くみんなで確認しようと情報共有されたそうですが、2度と妹さんは面会に来ることは無かったそうです。
結局Aさんはその出来事をきっかけに看護師の仕事を辞めてしまったそうです。